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肺炎球菌ワクチン(プレベナー20)の解説

[2026.03.13]

肺炎球菌が引き起こす病気と、なぜ予防が重要なのか

肺炎は、日本人の死因において常に上位に位置する病気です。特にご高齢の方や、糖尿病、慢性的な肝臓の病気、心疾患などの持病がある方にとっては、命に関わる深刻な事態を招くことがあります。肺炎を引き起こす微生物には細菌やウイルスなど様々なものがありますが、その中で最も頻度が高く、かつ重症化しやすいのが肺炎球菌という細菌です。

肺炎球菌は、健康な人の鼻や喉の奥にも存在していることがありますが、免疫力が低下したときに肺に入り込んで肺炎を引き起こします。また、肺の中だけに留まらず、血液の中に菌が侵入して「菌血症」という状態になったり、脳を包む膜に炎症が起きる「髄膜炎」を引き起こしたりすることもあります。これらは侵襲性肺炎球菌感染症と呼ばれ、非常に治療が難しく、その後の経過に大きな影響を及ぼす恐れがあります

一度肺炎にかかってしまうと、体力を大きく消耗し、もともとの持病が悪化したり、寝たきりのきっかけになったりすることも珍しくありません。だからこそ、病気にかかってから治療するのではなく、ワクチン接種によってあらかじめ免疫を作り、発症や重症化を未然に防ぐことが、健康長寿を守るための鍵となるのです。

プレベナー20(20価肺炎球菌結合型ワクチン)とは

プレベナー20は、これまでの肺炎球菌ワクチンの課題を克服するために開発された新しいタイプのワクチンです。専門的な言葉で言うと「20価肺炎球菌結合型ワクチン」と呼ばれます。ここでいう「20価」とは、20種類の肺炎球菌の型に対応しているという意味です。

肺炎球菌には100種類近くの「型」が存在しますが、人間にとって病気の原因となりやすい主要な型がいくつかあります。これまで主に使われてきたワクチンには、以下の2つのタイプがありました。

  • 23価肺炎球菌多糖体ワクチン(ニューモバックスNP)・・23種類の型をカバーするが、免疫の持続時間が短く、数年おきに再接種が必要となる傾向がありました。
  • 13価肺炎球菌結合型ワクチン(プレベナー13)・・13種類の型をカバーし、強い免疫を長く維持できる特徴がありました。

今回登場したプレベナー20は、これら両方の長所を兼ね備えています。プレベナー13が持っていた「強い免疫を誘導し、持続させる」という特徴を維持したまま、対応できる菌の型を13種類から20種類へと広げたものです。これにより、より広範囲の肺炎球菌に対して、長期間にわたる高い予防効果が期待できるようになりました。

プレベナー20で予防できる病気や症状

プレベナー20を接種することで、具体的にどのような病気や症状を防ぐことができるのでしょうか。主な目的は、肺炎球菌による感染症全般の予防です。

肺炎球菌性肺炎

最も代表的な効果です。激しい咳、高熱、黄色や緑色の濃い痰、呼吸困難などの症状が出る肺炎を予防します。特に体力が低下している方において、肺全体に炎症が広がるのを防ぐ効果が期待できます。

侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)

通常であれば菌が存在しないはずの血液、髄液、関節液などに肺炎球菌が侵入してしまう重篤な感染症です。プレベナー20は、この命に関わる合併症を予防する能力が非常に高いことが知られています。

敗血症・菌血症

肺の炎症箇所から細菌が血液に漏れ出し、全身に回ってしまう状態です。血圧が低下したり、多臓器不全を起こしたりする危険がありますが、ワクチンによって血液中の抗体価を高めることで、菌の増殖を抑えることができます。

髄膜炎

脳や脊髄を覆う膜に菌が感染する病気です。激しい頭痛や意識障害を引き起こし、救命できたとしても麻痺や聴力障害などの後遺症が残ることがありますが、ワクチン接種はこのリスクを低減させます。

プレベナー20の接種対象とスケジュールについて

2026年4月から、高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンの定期接種において、このプレベナー20が選択肢に加わり、原則としてプレベナー20を使用することとなりました。

基本的な対象者は、65歳の方です。各自治体から予診票が届きますので、それを利用して接種を受けることができます。過去に一度も肺炎球菌ワクチンを受けたことがない方は、このプレベナー20を1回接種することで、長期間の免疫を得ることができます。

一方で、以前に「ニューモバックスNP(23価)」や「プレベナー13(13価)」を接種したことがある方の場合は、接種間隔や必要性が異なります。過去の接種記録を確認し、適切なタイミングを判断する必要がありますので、お手元に接種記録(お薬手帳や市町村からの通知)をご用意の上、当院までご相談ください。

また、65歳以外の方であっても、慢性的な肝臓病、心疾患、呼吸器疾患、糖尿病などの持病がある方は、肺炎重症化のリスクが高いため、任意接種(自費診療)としての接種を検討する価値があります。私たちは個々の患者さんの健康状態に合わせた最適な接種時期をアドバイスいたします。

副作用(副反応)と接種後の注意点

どのようなワクチンであっても、接種後には副反応が起こる可能性があります。プレベナー20において報告されている主な副反応は、以下の通りです。

  • 接種部位の症状・・注射した部分の痛み、赤み、腫れが多くの人に見られます。これらは通常、数日以内に自然に治まります。
  • 全身の症状・・筋肉痛、疲労感、頭痛、関節痛などが現れることがあります。
  • 発熱・・軽い発熱が見られることがありますが、多くは1日から2日で解熱します。

重い副作用として、まれにアナフィラキシー(激しいアレルギー反応)が起こる可能性があります。そのため、当院では接種後15分から30分程度は院内、もしくはすぐに連絡が取れる場所で待機していただき、体調に変化がないかを確認させていただいています。

接種当日は激しい運動や大量の飲酒を避け、注射した部位を清潔に保つようにしてください。入浴は問題ありませんが、注射した部分をごしごしと擦らないように注意しましょう。もし、数日経っても腫れが引かない場合や、高熱が続く場合には、すぐにご連絡ください。

料金について

肺炎球菌ワクチンの接種料金は、公費助成の対象か、あるいは自費での接種かによって異なります。

定期接種の対象となる方(主に65歳で自治体から通知が届いた方)は、自治体による助成が受けられるため、自己負担額は比較的抑えられます。苅田町や周辺自治体にお住まいの方は、お住まいの地域によって負担額が設定されていますので、詳しくはお問い合わせください。

任意接種(定期接種の対象外の方)として希望される場合は、全額自己負担となります。プレベナー20は1回の接種で長期間の効果が期待できるため、長期的な健康管理の費用として検討いただければ幸いです。

肺炎球菌ワクチン(プレベナー20)についてのよくある質問

Q1. 以前に23価ワクチン(ニューモバックス)を打ちましたが、プレベナー20も打つべきですか?

A1. 過去に23価ワクチンを接種された方でも、プレベナー20を接種することでさらに強固な免疫を作ることが可能です。ただし、前回の接種から一定以上の期間を空ける必要があります。個別の状況によりますので、まずは診察時にご相談ください。

Q2. 肝臓の持病がありますが、接種しても大丈夫でしょうか?

A2. はい、むしろ肝臓の持病がある方こそ接種を強くお勧めします。肝機能が低下している方は免疫力が低下しやすく、肺炎が重症化するリスクが高いためです。当院の肝臓専門医が体調を確認した上で、安全に接種できるよう配慮いたします。

Q3. 風邪気味なのですが、接種は受けられますか?

A3. 明らかな発熱(通常37.5度以上)がある場合や、体調が著しく悪い場合は接種を控えます。軽い鼻水程度であれば接種可能なこともありますが、安全を期して、万全の体調の時に受けていただくのが一番です。

Q4. インフルエンザワクチンなど、他のワクチンと同時に打てますか?

A4. 医師が必要と認めた場合には、他のワクチン(インフルエンザワクチンや新型コロナワクチンなど)との同時接種も可能です。スケジュールの調整が難しい場合はご相談ください。

Q5. 1回打てば、一生効果が続きますか?

A5. プレベナー20のような結合型ワクチンは、非常に長期間の免疫を維持できることが特徴です。現時点では、健康な成人の場合、基本的には1回の接種で十分な効果が長く続くと考えられています。

院長より

肺炎は「老人の友」という、かつての医学界で使われた悲しい言葉があります。これは、高齢の方が他の病気で苦しむ中で、最後に肺炎が静かに命を奪っていく様を表現したものです。しかし、現代の医療において、肺炎はワクチンで防ぐことができる、あるいは少なくとも重症化を回避できる病気へと変わってきました。私は、地域の皆様が肺炎によって突然日常を奪われるようなことがあってはならないと強く思っています。

特に苅田町周辺にお住まいで、まだ肺炎球菌ワクチンを受けたことがない方や、ご自身の持病について不安を抱えている方は、どうぞお気軽に私たちを頼ってください。ワクチン接種は小さな一歩に見えるかもしれませんが、それは将来の自分自身、そして大切な家族を守るための非常に価値のある決断です。

「どのワクチンを打てばいいのかわからない」「注射は痛いから不安だ」といった、些細な悩みでも構いません。皆様の不安を一つずつ解消し、納得して治療を受けていただけるよう、丁寧な説明を徹底しています。私たちは、専門医としての確かな技術と、地域のかかりつけ医としての温かさを大切にしながら、皆様のご来院をお待ちしております。一緒に、10年後、20年後も笑顔で過ごせる体づくりをしていきましょう。

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